千葉県柏市で志ある中小企業を応援する元気な社会保険労務士事務所です
営業時間 | 8:00~17:00 (土日祝を除く) |
---|
アクセス | JR柏駅東口より徒歩3分 |
---|
今、運送業界にまさに逆風が吹き荒れています
この裁判で、歩合給の一部を残業代として支給する賃金体系が否定されました。これから発生する運送業の未払い残業案件に痛烈な影響を及ぼすことは明らかです。
未払い残業請求の期間が2年から3年になったことで、単純に請求額が1.5倍になりました。このことで労働者側の弁護士事務所が一大ビジネスチャンスと捉えて積極的に残業代請求ビジネスを始めることが予想されます。実は、この時効はいずれ5年間になることが確定しています。このまま対策を取らなければ、残業代請求で経営が揺るがされることが危惧されます。
ご存じの通り、手元のスマートフォンでいとも簡単に情報が得られる時代です。そして70年ぶりの大改訂といわれる「働き方改革」が中小企業にも浸透しつつあります。グレーやブラックではなく「法律を守る会社」が選ばれる時代になりました。
中小企業は法律を守れなくて当たり前、運送業界は法律なんか誰も知らない…などの今までの常識が通用しなくなっています。今、ここで未払い残業のリスクをできる限り削減させるための思い切ったご判断、取り組みが必要です。
「完全歩合制」はその一手としてメリットの多い、かつ適法な手法です。導入に成功すれば、法律を守り社員が安心して働ける企業への発展に向けて、大きな舵を切ることになると確信いたします。
「完全歩合給」とは、賃金を労働時間ではなく、成果に応じて支払う制度です。
「成果」のことを、出来高給、歩合給、業績給、運行給、コミッション、インセンティブと呼ぶこともあります。ここでは、運送業やタクシー事業者のドライバー職をメインに説明しますので、「歩合給」と統一して呼びます。
それでは「完全歩合給」は適法でしょうか?
なんとなく「違法じゃないかな…?」というマイナスイメージがあるのですが、
・・・答えは、法の定めをクリアすれば適法です。
(出来高払制の保障給)
第27条 出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
上にある労基法上の「保障給」を設定すれば適用となります。ここでポイントになるのが「労働時間に応じ」た保障給である必要があります。例えば「月額23万円保障」という月額での決め方ですと問題が生じる恐れがあります。
①残業代の計算方法
本当に、運送業の「未払い残業紛争」が急増しています。運送業界の特徴である労働(拘束)時間が長いこと、さらに労働時間管理が難しいこが紛争になりやすい主な原因だと思われます。ご存知でしょうか?高速道路のサービスエリアに弁護士事務所の広告が目に付くように置いてあります。「トラックドライバーの皆様、2年間分の未払い残業代は○○百万円!」とあおり、フリーダイヤル番号が記載されているのです。何かの拍子に従業員が行動を起こしたら…?!あっという間に訴訟に発展する恐れがあります。
前置きが長くなりましたが、完全歩合給制度は、残業代計算方法に、大きな特徴があります。(労基則19条1項6号)
歩合給÷総労働時間x割増率(通常の法定外労働の場合0.25)x残業時間
具体的に計算してみましょう。
【月所定労働時間;170時間、残業50時間の場合】
◆月給35万円の残業代計算
(350,000円÷170H×1.25)×50H≒128,677円
◇完全歩合給35万円の残業代計算
(350,000円÷220H×0.25)×50H≒19,887円
《一人当たりの差額》
◆128,677円-◇19,887円=108,790円!!
法律通りの計算方法で、これほど残業代が異なります。このように完全歩合給を適正に運用することで、割増賃金を抑えることができます。
②長時間労働の抑制
一般的な「基本給○万円」というような固定給制度の場合、「ダラダラ残業問題」に苦慮する経営者が多いです。社員の業務効率が悪く時間がかかりすぎる、残業代稼ぎが目的ではないか・・・?!というお悩みです。では、完全歩合給制度ではどうなるでしょう?想像してみてください。上の公式を見ると、歩合給を月の総労働時間で割っていますね。ですので、歩合収入が増えなくて労働時間だけが長くなっていった場合、割増賃金の単価はどんどん下がってしまうのです。しかも実際支給される残業代も非常に額が少ないです(固定給と比べて)。結果、効率よく運転、運送を終わらせてさっさと終業しよう、という志向性が生まれます。完全歩合給制度は、長時間労働の抑制に役立ちます。
③事業経営の本質
以前から日本の中小企業の生産性が低いと問題視されています。生産性向上は簡単なことではありませんが、適正に完全歩合制を運用することで、まず未払い残業リスクは画期的に減少します。そして労使双方が協力して生産性向上を目指す…という事業経営の本質と合致することが一番のメリットだと考えます。労使協調を土台としたWInWInの事業経営を目指しましょう。
④評価制度が不要
一般的には、昇給や賞与を決めるとき、社員の働きぶりを評価して決定します。公平な評価制度を作るだけでも相当な労力がかかり、それをスムーズに運用していくのも中小企業にとっては簡単ではありません。トライ&エラーを繰り返して精度を高めていきます。それはそれで意義があるのですが・・・。
運送業さんは、入社1年目の新人ドライバーより、10年勤続のドライバーのほうが、貢献度が高い…とは限りませんね。一般的な年功給や等級制度ではドライバーの貢献度を反映しにくいという問題点があります。完全歩合給制度は、運送収入を稼いでくれたドライバーが貢献度が高いというシンプルな仕組みです。稼いでくれた分をそのまま報いてあげたいという経営者の気持ちにピッタリ合うのが「完全歩合給制度」と言えます。明確でしかも公平なので、こむずかしい評価制度の構築は不要でしょう。その分、自社のドライバー達が長く元気に運転できるよう心身の健康に配慮してあげましょう。
⑤同一労働同一賃金対策も不要
ご存知でしょうか。少し前に「ハマキョウレックス事件」「長澤運輸事件」という大小2社の運送業の裁判が相次ぎました。2021年4月1日に中小企業も対象に「同一労働同一賃金」(労働契約法第20条)が施行されます。このテーマは奥が深く一概にまとめるのは難しいのですが、「完全歩合給制度」はこの領域にも画期的にリスクを減少させることができます。正社員と非正規ドライバー(有期契約社員や定年後の嘱託契約社員)の処遇で悩むことは限りなく少ないと思われます。ほとんどの会社は、ドライバー職は、雇用形態に関わらず共通の歩合給算定を行っています。そうすれば、高齢に伴って体力が落ち運送量が少なくなった、あるいは週に3,4日ほどの出勤日数にしたい、というような幅広いケースにも悩むことはなくなります。そのような働き方に応じて、自然に歩合給も少なくなるためです。逆に自分のペースで働きそれに応じた収入を得ることができるので、高年齢ドライバーに対して門戸を開く制度でもあります。
①緩和措置が必須です・・・社員が安心するために
固定給制度から完全歩合給制度に切り替える場合は、社員の既得権を保護する必要があります。人間は現在の既得権にこだわる傾向がつよいと言われます。新しい賃金制度になって少しでも自分の給与が減るのでは…という不安は、経営者が思う以上に大きいのです。
そのような社員の不安をやわらげるために一定期間、現在の賃金水準を保障することを約束します。緩和措置として可能であれば3年間が望ましいです。3年間の緩和措置にはいくつか手法がありますので、シミュレーションしながら慎重に判断しましょう。
代償措置として、定年延長とセットで導入する事例もあります。例えば60歳定年を65歳に延長するといったことです。転職や再就職をせずに同じ会社で働けることは、社員にとって大きなメリットです。人手不足の時代にあって、健康であれば高齢ドライバーでも活躍してほしいと考える企業側とマッチしますので検討をお勧めします。
※緩和措置を全く行わない場合は不利益変更となるリスクが高いため、後述のご支援はお引き受けいたしません。
②コンプライアンス(法令順守)
気を付けてください。「完全歩合給にしたら残業代を払わなくてもよい」もしくは、「完全歩合給に残業代が含まれている」ということを時々聞きますが、全くの都市伝説です。メリット①でお伝えしましたように、完全歩合給の大きな特徴は、特別な計算方法により割増賃金額が抑えられることです。ですからきちんと労働時間(実働)を管理して正々堂々と残業代を払いましょう。つまり完全歩合給導入によってコンプライアンス重視の経営に大きく近づくことになるのです。そのような経営者の方針に社員は安心感を持ちよい人材が長く勤められる、そのような好循環を目指したいものです。
※コンプライアンスに反した労務管理をお考えの方は、後述のご支援はお引き受けいたしません。
➂規程への明記
歩合給制についての運用ルール(歩合率や保障給など)は、必ず就業規則(&賃金規程)に記載しておきましょう。雇用契約書だけの記載、あるいは内規として社員に周知していないという状態は、リスクがあります。具体的に明記して社員に周知説明を行い「この規程のルールに従って給与計算しています!」
と言える状態にしておくことが重要です。そうすれば今後何か変更が必要になった場合でも、就業規則の変更により変更することが合理的だと考えられます。
参考までに一つ判例を紹介いたします。
歩合給の計算方法は、個々の賃金額そのものではなく乗務員全体に共通する賃金の計算方法であるため本来、統一的かつ画一的に処理されるべきものであり、就業規則による処理に親しむものである。(第一小型ハイヤー事件最高裁二小平成4.7.13判決労判630号6頁)
※就業規則の変更作業は納品物に含まれています。
④求人募集に注意!
もしかすると、完全歩合給制度のデメリットだと思われるのが、ハローワーク求人票の記載です。一般的な固定給用の求人票なので、完全歩合給の魅力が伝えにくいのです。基本給欄には最低限保障される部分を記載します。そして歩合給の詳細については「その他の手当等付記事項に記載します。ここが大事なので、実績やモデル例の給与額を記載してアピールしましょう。
管轄のハローワークが、最悪の場合求人票を受け付けてくれないという話も聞いたことがあります。いずれにしてもこの人材難の時代にハローワーク求人頼みは限界があります。時流にあった他の媒体を戦略的に使いましょう。
⑤最後に「社風」はどうか?
新しい賃金制度を導入する場合の大前提は、一つ目に、経営者が「緩和措置」を社員に約束すること。二つ目に、急がず丁寧に説明すること。要するに、社員の不安を取り除くことが重要です。最後に、完全歩合給を受け入れやすい社風か否か、もご判断ください。安定志向の大企業よりも、職人気質的なドライバーの多い小規模企業のほうが、受け入れやすい社風にあると個人的に感じています。
~ご依頼にあたって~
◆法令順守のご意向があること
◆以下の2つをクリアする就業規則があること
①御社の実態にあっていること。
②労働時間、休日が適法(1週40時間)に規定されていること
→上の2つをクリアする就業規則がない場合は、顧問社労士にご相談されるか、導入サポートのオプションをご依頼ください。
◆Zoomを使えること(導入サポートはZoomを使って打合わせます。)
※実績のある社会保険労務士が担当しますので、毎月一定の受注件数に達した場合は、お断りするか、受注時期を繰り下げて頂いております。1社ずつカスタマイズして仕上げる品質を保持するためご理解ください。(無料ご相談は随時可能です)
全体の流れをご説明いたします。
オプション①就業規則・賃金規定作成
•「完全歩合制制度」を合法的に運用するためには、整備された就業規則があることが必須です。実態に合った合法的な就業規則がない場合は、「運送業標準版」を作成します。
•賃金規程を含みます。
•実態に応じて「変形労働時間制」も整備します。
打合せ内容を理解したうえで、
ご提示する「シミュレーションシート」を使って歩合給をお決めください。
•録画解説30分→個別解説→質疑応答
•基本事項の確認
•歩合給を決めるにあたって理解すべき3つの原則と設定例
•諸手当の検討(残すべき手当はあるか)
•シミュレーションシートの使い方説明
打合せ期間中は進捗フォローのため、チャットワークを開設します。
•録画解説30分→個別解説→質疑応答
•歩合率の妥当性について
•保障給の考え方
•完全歩合給の勤怠について
(欠勤、年次有給休暇取得時の給与計算)
•切り換えにあたっての緩和措置と代替措置
運送業支援コンサルタント
特定社会保険保険労務士の川村由里子が担当します
•歩合率の決定、緩和措置の決定
•賃金規程ヒアリング
•導入までのスケジュール検証
1か月半~2か月程度で納品します
•標準的なスケジュールは、打ち合わせを隔週で行い、
初回打ち合わせ(就業規則作成含まず)から
1か月半~2か月程度で納品いたします。
【納品物】
•変更後の就業規則データ
(会社様のほうで労基署へ届け出してください)
•同意書サンプル
オプション②社員説明会
•スムーズな導入のために必ず実施してください。
•原則は、自社で就業規則を使ってご説明行ってくださ い。希望があればオプションでお引き受け可能です。
運送業の社長様からのよくあるご質問をご紹介します。
~打合せ内容~
〇歩合給の基本的な考え方をお伝えします。 |
〇幾つかの設定事例をご紹介します。 |
〇シミュレーションシート(excelデータ)をご提示します。 |
~会社さんの作業~
〇直近一年間程度の賃金支払い実績をもとに、歩合にした場合のシミュレーションをしながら、妥当なパーセンテージを見極め、最終的に会社さんが決定してください。 |
柏ろうむサポートは志ある中小企業を応援します!
柏市で相談しやすく安心スピーディな社労士事務所をお探しなら、柏ろうむサポートにお任せください。
お問い合わせ・相談予約
営業時間:8:00~17:00
※土日祝を除く
※事前にアポイントをお取りいただければ業務時間外も対応可能です。
令和5年12月5日柏商工会議所主催のセミナーにて講演
令和5年10月8日 我孫子市創業塾にて講演
令和元年11月26日 ㈱OBC主催「奉行クラウドフォーラム2019東京」にて講演
我孫子市男女共同参画情報誌『かがやく』Vol.30 にてコラム執筆
日本法令 月刊ビジネスガイド 2010年7月号
日本法令 月刊「ビジネスガイド」別冊「SR」第16号
社会保険労務士事務所
柏ろうむサポート
〒277-0005
千葉県柏市柏2-7-23
コササビル2F
JR柏駅東口より徒歩3分